バス事業再建の救世主? みちのりHDの勢力拡大と情報提供統一の動き

2017年10月27日、みちのりホールディングス社による日立電鉄交通サービス社の買収が発表されました。経営の傾いたバス事業者の再建に定評のあるみちのりHD社の取組について、Webでの情報提供を中心にまとめました。

みちのりホールディングスとは

東北・北関東のバス会社などを傘下に収めて経営再建を行う、持ち株会社です。社長は松本順氏、親会社は冨山和彦氏がCEOを務める経営共創基盤です。両氏とも産業再生機構の出身です。

詳しくは、国交省の委員会スライド「バス事業における生産性向上と公共交通の活性化」をご覧ください。

勢力拡大

買収年表を作ってみますと、ほぼ毎年買収していることがわかります。
県内最大の関東自動車を抑える栃木県では71%、主要2社を抑える福島県では65%と過半数を超えています。

買収年表

  • 2009/03 福島交通(福島県)
  • 2009/03 茨城交通(茨城県)
  • 2010/03 岩手県北バス(岩手県)
  • 2012/04 関東自動車(栃木県)
  • 2013/08 会津バス(福島県)
  • 2015/06 湘南モノレール(神奈川県)
  • 2016/12 東野交通(栃木県)
  • 2017/03 南部バス(青森県)※岩手県北バスへの統合
  • 2017/12 日立電鉄交通サービス(茨城県)

バス傘下率マップ

 

みちのりHD傘下率マップ(台数ベース)国土交通省 全国乗合バス事業者の移動円滑化基準適合車両導入状況(2015年3月31日時点) を基に作成

 

スケールメリットを生かす経営方針

みちのりHDでは、グループ会社全体の取組をいくつか掲げています。事業会社への常駐者による経営・運営(縦軸)と、共通施策の「横串」により、「ベストプラクティスの横展開や、スケールメリットの追求により、単独では成し得ない改善効果を生み出す」ことが、ホールディングスとしての付加価値です。

みちのりHD Webサイト「グループ会社」より
「バス事業における生産性向上と公共交通の活性化」より

 

「バス事業における生産性向上と公共交通の活性化」より

Web上での情報提供

さてここで、バス会社の経営やサービスについての深い話を……したいところではありますが、今回は私の関心事であるIT活用の典型、Web上での情報提供について見てみましょう。

みちのりHDでは、グループ共通の取組に「ホームページのリニューアル、路線・ダイヤ検索サイトの立上げ」を挙げています。バス会社のWebサイトといえば、各社ばらばらでチカチカした配色の分かりづらいページというイメージがありますが、はたしてみちのりHDではどうなっているでしょうか?

そっくりなトップメニュー

傘下の事業会社のWebサイトを見ると、トップメニューの構成がほとんど同じことに気づきます。「路線バス」「高速バス」「貸切バス」の順にメニューが並んでいます。おそらくこれが、彼らの「ベストプラクティス」なのでしょう。

トップメニューの構成はそっくり

統一されつつある自社サイトでのダイヤ情報提供

共通の取組に「路線・ダイヤ検索サイトの立上げ」とありましたので、その状況も見てみましょう。

乗換検索については、これから買収される日立電鉄、買収から1年経過していない東野交通と南部バスを除き、実装されていました。

自社Webサイトでのダイヤ情報提供

 

また岩手県北バス等4社の検索画面はほとんど同じ構成です。

まだまだバラバラな時刻表

その先のリンクをたどっていくと、バス停ごとの時刻表のPDFをダウンロードできます。先ほどの検索画面がほとんど同じだった4社は時刻表も同じかと思いきや、岩手県北バスの時刻表だけは大きく構成が異なりました。会津バス、関東自動車、茨城交通は概ね同構成ですが、ところどころスタイルが異なります

バス停時刻表のPDF

統一は道半ば どこまで作りこむべき?

ということで、道半ばではあるものの情報提供システムが統一されつつあることがわかります。「横串」の一つである「共同購買」もおそらく行っているのでしょう。

ただ正直言って、サイトの使い勝手はよくありません

  • 発着地が入力しづらい(停留所名を入れさせられる、ランドマークや住所の検索が貧弱)
  • 鉄道や他社バスと併せた検索ができない
  • 時刻表など関連情報が見づらい(複雑なPDFを読まされる)
  • スマホアプリが無い

乗換検索アプリの対応状況

バス会社サイトでの検索の使い勝手の悪さは、汎用の乗換検索アプリを使えば解決できます。

各アプリの対応状況

主要な乗換検索アプリでの対応状況を調べると、ナビタイム、ジョルダンでは全社対応していることがわかります。

ジョルダンから時刻表データ提供を受けているGoogleでは、南部バスだけなぜか非対応でした。駅すぱあとで有名なヴァル研究所からデータ提供を受けているYahoo!も2社が非対応でした。

オープンデータ化による普及への期待

無料で全機能が使えるGoogleやYahoo!で検索できるようになれば利便性が上がります。そのカギを握るのは時刻表データの標準化とオープン化です。

国交省では「標準的なバス情報フォーマット」を今年の3月に定めました。これは、元々Google Mapsで使っていた時刻表フォーマットである「GTFS」に準拠しつつ、日本の事情に合わせて拡張を加えたものです。このフォーマットに合わせてデータを公開すれば、Googleはもちろん、オープンデータの取組を推進しているヴァル研究所も取りこみYahoo!にも反映されることでしょう。

リアルタイムのバスロケ情報も、「GTFSリアルタイム」というフォーマットで公開すれば自ずとGoogle Mapsに載ります。(下図は宇野バスの例)

というように、自社サイトを作りこまなくても、データを標準化・オープン化すれば既存の高品質なアプリに取り込まれてユーザに届きます。オープンデータ流通による集客も、みちのりHDのベストプラクティスにぜひ加えていただきたいものです。

まとめ

  • みちのりHDは毎年のようにバス会社を傘下に収め、その勢力は北関東・東北に広がっている。
  • 事業会社ごとの「縦串」とグループ全体の「横串」の両方の取組を組み合わせた事業改善効果を生み出している。
  • Web上での情報提供も「横串」と位置付けられ、トップメニュー、乗換検索、時刻表等が統一されつつある。
  • 時刻表データが標準化・オープン化されれば、ナビタイム、ジョルダンだけでなくGoogle、Yahoo!にも取り込まれ、より情報が届きやすくなるだろう。

路線バスは、事業者間での競争が乏しく、また赤字であっても補助金により補填されることから、古い産業構造が残ってしまっています。そんな中、すべきことを見定め着実に実施し、スケールメリットを押し出しながら事業改善を図っていくみちのりHDは異彩を放っています。今後の動向も注目です。

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