第2回岡山市公共交通網形成協議会から考える地域公共交通の姿

肝心な実現方法は?

混沌とした状況となってしまった岡山市の公共交通を立て直すには次の3つが肝心と私は認識しています。

1. 財源

公共交通は独立採算の範囲内での民間事業のため、サービスレベルが低く、事業者に人材も集まらず、投資ができないがために近代化も遅れてしまっています。

一方で道路には多大な税金が投じられています。道路予算は岡山県が125億円、岡山市が30億円であり、バスの補助金が岡山県全体で数億円レベルなのに対し大きな額となっています。

岡山市総合交通計画(素案)より

岡山市は年々自動車利用への依存が高まり、交通手段構成比のうち自動車が60%を占め、公共交通機関は7%に過ぎません。通勤通学時に置ける自家用車交通分担率は56%と、政令指定都市で3番目に高い比率となっています。

総合交通計画では「自動車に過度に依存した暮らしからの脱却」が第1の課題に挙げられています。道路からの予算転換も含め、地域インフラとしての自治体がどれだけ投資するのか次第で、公共交通再生の議論はまったく変わってきます。

2. 企業再編

バス事業者の乱立と過当競争

戦国時代が続く岡山の路線バス

岡山県ではバス事業者の戦時統合が途中で終わってしまい、岡山市には伝統的に5事業者が存在し続けています。その結果、福岡の西鉄、広島の広電、高松のことでん、松山の伊予鉄のような地域独占性の強い企業がありません。競合同士のサービス競争・技術開発が盛んという良い面はあるものの、マイカーの普及に加えて人口も減少してきた今は、事業者間の過当闘争による弊害が目立ってきています。

そこにさらに八晃運輸が参入してきて、両備グループが廃止届を出すほどの社会問題となりました。

本協議会の場でも、第1回では規制強化を主張する両備グループと自由競争を主張する八晃運輸の対立がありました。第2回においても、(真偽ははさておき)宇野バスが後楽園バスに対する競合他社(岡電バスと考えられる)による「頭ハネ」を主張するなど、バス事業者間の歩み寄りは見られません。

両備・宇野の2グループに岡山のバスシステムは収斂

岡山のバスオープンデータは2グループ

バス情報システムの整備やオープンデータ化の取組においては、宇野と両備の2グループに収斂してきています。Sujiya Systemsの高野氏開発の「バスまだ?」が宇野バスだけでなく下電バスに導入され、両備グループのリオス社の「Bus-Vision」が中鉄バスに導入されました。

現代に合ったバス事業社の規模とは

一方で第1回の協議会では、下電バスは「全路線赤字」と発言し、中鉄バスは乗務員不足の窮状をひたすら訴えました。協議会の直前には、中鉄バスの乗務員不足による3路線の休止が報道されました。下電バスと中鉄バスにおける路線バス事業の苦況は協議会の場においても顕在化しています。また八晃運輸の「めぐりん」の日中の乗車人数は1便あたり数人程度であり、採算性には疑問があります。運輸連合(交通連合)のような大きなスキームの変革以前に、経営困難な企業が出てくる可能性があります。

また両備グループは、運輸連合の実現を主張するのであれば、まずはグループ内の両備バス・岡電バスの一体的な運営による質の高いサービスを実現してほしいところです。

みちのりHDの経営リソース・ノウハウの共有や、先述のようなITシステム投資の共有を例に考えると、もはや地域の基幹路線バス事業は中小零細企業の担う事業ではないのかもしれません。海外では、Transdev社が20か国の交通事業を担うなど、多国籍企業による地域交通運営も一般的になっています。地域交通事業者の規模拡大の必要性は、今後、MaaSや自動運転の普及に伴いより一層高まるでしょう。

JRは地域に根を下ろして

連携不足はJRとバスの間も同様です。乗継割引や定期共通化など運賃制度における連携や、幹線鉄道と支線バスを組み合わせたネットワークの構築などは全く進んでいません。新幹線や近畿圏の在来線で運輸収入の87%を得ているJR西日本にとって、岡山は一地方支社にすぎません。しかし岡山市にとっては唯一無二の鉄道会社です。JRの地方都市内鉄道の充実のためには、機動力や財源を持てるような地方への権限委譲が必要になるかもしれません。

その動きが、整備新幹線の並行在来線で進みつつあります。例えば「あいの風とやま鉄道」では、高岡駅-西高岡駅間(5.3km)に「高岡やぶなみ駅」を開業させました。さらに富山-東富山間(6.6km)にも2021年春に新駅が開業予定です。その他、青い森鉄道の筒井駅(青森-東青森間5.8km)、しなの鉄道の千曲駅(戸倉-屋代間6.0km)などの実績の他、各地で新駅の計画があります。

3. 合意形成

全体最適の視点から、今回市から示されたような交通サービス、先述のような運営財源・組織が、どのようにある「べき」かは、教科書的にいくらでも書けます。問題は実行計画です。

岡山市総合交通計画は、総花的できわどい所に踏み込んでいないものです。また、協議会も高齢の地元有力者が集い、お互いの意見を牽制しながら述べあう程度の場でしかありません。特に第2回は事業者からも「市から方向性が示されたことを評価」とコメントが出るなど、誰からも踏み込んだ意見は出ないまま、市長が「皆さんほとんど意見がなく、合意に達したと思います。よかったと思っています。」とコメントするに至っています。

地方都市に本気でないJR、バスにしか眼中に無いバス会社、LRTをぶち上げるばかりで道路予算やバス近代化まで切り込むつもりの無い岡山市に任せていては、その範囲内でしか事は進みません。直接利害の無い有識者と市民とがオープンに議論をしていく場作りが必要と思います。

そのきっかけになるべく、本記事を書き残します。

 

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