第2回岡山市公共交通網形成協議会から考える地域公共交通の姿

バスの改善策は実態を踏まえているか?

岡山のバスに関わり始めて1年足らずの私の目から見ても、バスのダイヤや利用環境改善に関する市からの提案は、楽観的・抽象的で、岡山のバスの実態をどこまで捉えた上での提案か疑問でした。

事業者横断的なダイヤ調整

パターン化による運行間隔が均等で覚えやすいダイヤへの調整が提案され、終日10分間隔という調整例が提案されています。あくまで「イメージ」とありますがさすがに非現実的で、事業者間調整の方法という点を除いても、次のような疑問がわいてきます。

  • 需要変動:ラッシュなど時間帯による需要変動に対応できるのか。現行のダイヤは、満員による積み残し防止、始業時間、車両・運転手数の上限などを考慮して、特にラッシュ時は注意深く設計されている。
  • 所要時間変動渋滞による所要時間変動をどう考慮するのか。見かけ上パターンダイヤにしても待たせては低評価
  • 運行効率との両立:コスト削減の制約が強まっている今、どのバス会社も乗務計画はギリギリまで回送や待ち時間を減らして組んでいる。例えば1周70分の路線でどう30分間隔のパターン化を行うのか。
  • ネットワークでの最適化:枝分かれの多い路線で、幹線部分と支線部分の最適化の両立をどう行うのか。方面にかかわらず都心部には同じような時間帯に需要が発生する。

ITの現状をどこまで踏まえているか?

Sujiya Systemsの高野氏と契約している宇野バス、バス情報システムのシステム会社を持つ両備グループを中心に、岡山のバス情報システムはかなり進化しています。その最新状況をどこまで把握した上での提案かは気になってきます。

  • 方面別の色分けにある程度効果があるとしても、行き先表示器をフルカラー対応な製品に置き換えることに補助金を付けるほど優先度の高い施策なのか。
  • 標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)が「Web上での運行情報提供提供」にのみかかっている。GTFSベースの標準的オープンデータを、サイネージ、マルチモーダル、多言語案内など様々に活用する「ワンソース・マルチユース」をどこまで理解しているか。この1年での急速な展開を踏まえての施策か。
  • 岡山市が2017年4月にリニューアルした「えきバス時刻表」のサイネージやスマホサイトは、標準的オープンデータに対応しない独自形式なもの。

渋滞対策の効果は?

「定時性・速達性の確保」として「ボトルネック交差点改良」「バスレーン」「PTPS」が上げられていますが、どこまでの効果を期待して具体的な検討がなされているか疑問です。

総合交通計画ではボトルネック交差点5カ所の事業化の目処が立ったと書いてありますが、そこら中が渋滞している岡山では、局所的な対策ではいたちごっこで、自動車の需要抑制が根本的な対策ではないでしょうか。

バス屋相手だからこそディティールが重要

市民向けであれば理想的な将来像を綺麗でシンプルな表現で伝えることも大事ですが、協議会の参加者は100年続くバス事業者の経営者です。ありがちな話を漠然と並べたような計画では、市役所や計画がバス事業者に見くびられる可能性もあります。

現時点で全てにおいて詳細に示すことは難しいでしょうが、重要なところだけでも、バス事業者が唸るような精度で将来像やそこに向けたプロセスを提示していくことが、岡山市の本気を示すことにも繋がるように思います。