トラフィックブレインの太田です。
市役所、各企業のご協力のおかげで、Urban Innovation KOBE(UIK)のバスロケ統合プロジェクトは極めて順調に進んでおります。高野さんはもうその筋屋にダイヤを取り込んでしまいました。バスロケのサンプルデータも届いたので、早速これから開けてみます。来週7月3日には、各バス会社、バス協会、大学の先生に集まっていただき勉強会を行います。
極貧!Urban Innovation KOBE
市が設定した課題に対して採択されたからには潤沢な研究資金が…ということは全く無く、
支給されるのは開発支援金(50万円)のみです。
交通費さえ支給されません。それだけでなく、設備の支援も極めて乏しいです。
資金
- 応募者への資金は開発支援金50万円のみ
- 事務局は1032万円で発注
- 採択5社中4社は県外(3社は東京)だが交通費無し
- 次年度の発注の保証は無い
設備
- 担当課にはWiFiルーターもスピーカーフォンもポータブルモニタも買ってくれない
- 市はクラウド使用不可、マイナンバー等のせいで添付ファイルを開いたりWebサイトを見るにも別ログインが必要らしい
それでも応募した理由
資金的な条件は募集時に明らかでしたし、設備面も、これまでの自治体や伝統的企業との業務経験から想像できていました。にもかかわらず私達が応募した理由を記します。
1. 今、解決すべき
「標準的バス情報フォーマット」の普及
- 市民、バス事業者、システム会社、自治体レベルなどで、路線・時刻表など静的情報を扱うフォーマットとして広まってきた。
- その次にバスロケをどうしようかという声が出てきている。
- →盛り上がっているうちに次のステップとしてバスロケに進みたい
各地域で統合バスロケの動き
- 佐賀県、富山県、沖縄県、大分県、群馬県などで統合バスロケの準備が進められている
- 標準化・オープンデータ化が不明確。時刻表等についてGTFS-JP対応・オープンデータ化が規定されていても、バスロケが不明
- 地域ごとのアリバイ的なアプリが必須になっている
- →地域ごとのシステムやアプリが作り散らかされる前に、技術的な指針や、自治体の果たすべき役割を示す必要がある
オープンなバスロケ製品がない
- 標準的バス情報フォーマット、GTFS Realtimeをオープンデータ化し、Google Mapsに掲載しているのは高野が開発している非売品の「バスまだ?」のみ
- 各バスロケシステム会社では標準化対応を開発、検討中
- →標準的な方法の確立、優良製品の育成が必要
国交省のバスロケ政策が迷走
- 全国的な課題で、国や自治体の補助金で作る国策なので国交省のリーダーシップに期待をしたいが、それどころか省内で切り口が分かれ、連携もほぼしていない。
- GTFS標準化を行ってきた国交省交通計画課は下期にならないと動かない、バスロケがスコープ内か不明。
- 補助金支給要件に標準化・オープンデータ化の要件は無い。
バスロケ関連政策 部署 GTFS標準化 総合政策局 交通計画課 オープンデータ 総合政策局 情報政策課 準天頂バスロケ実証実験 総合政策局 技術政策課 地域公共交通確保維持改善事業 総合政策局 交通支援課 ETC2.0バスロケ実証実験 道路局 企画課 XML標準化(過去) 自動車局 総務課 受入環境整備事業 観光庁 外客受入担当参事官 - →国のリーダーシップは期待できないので、地域での課題解決を先行して国にフィードバックしていく
空回りしている自治体オープンデータ
- 各自治体に総務省中心のオープンデータ化の波が押し寄せてきている
- 有用性の低いデータの手当たり次第な公開に税金が投じられている
- データ整備、GIS、基盤システムを作りたい業者に自治体が食い物にされている
- 必要性は高いが整備が大変なデータ、公共性が高いが民間の保有するデータの公開は進んでいない
- 流通、活用、ビジネス展開のエコシステムが構築されていない
- →専門家の知見が入った価値を生むオープンデータ・エコシステムが必要
2. 私たちなら解決できる
岡山での実践
最強チーム
- 太田がコンサル・分析、伊藤が標準化・オープン化、高野が開発、とバス情報の各分野で最強な3人が似た問題意識を抱いていた。
- 比較的時間的・金銭的な余裕があり、失うものがない立場。
- 自社製品を入れ込む必要がなく、中立的な議論ができる。
- 全員が岡山での実践の当事者。
- →この3人でなければ本質的な解決は無理だろう
3. UIKだから解決できる
政令市
- 地域の利益のために各事業者に働きかけられる立場
- 地域での実践結果をもとに国に働きかけられる立場
- 政令市なので基礎自治体単独での規模・権限が大きい
- →政令市ではフットワークとインパクトを両立できる
CIVIC TECH
- CIVIC TECHに注目が集まってきている
- UIKはCode forの代表である関さんが仕掛けている新基軸
- Code for などは地域軸が強すぎで、専門性が低い
- 交通分野ではCIVIC TECHの認知度がまだ低い
- →交通専門家によるCIVIC TECHに挑戦する機会
オープンイノベーション
- オープンイノベーションが注目されてきている
- 「UIK」を名目に、普段とは違うアプローチが、庁内、業界から許されやすい
- →レガシーな組織にも新しい風を吹かせやすい
開発支援50万円だからこそ
- 受発注関係ではないので、応募者がプロセスやスピードのリーダーシップを取れる
- 市の検討業務ではないので、ある程度プロセスをオープンにできる
- →スピーディーに展開し市のプロジェクトに乗せて正論を発信できる
まとめると
こういった、プライスレスな価値を求めて、私達は応募しました。今のところ、この方向性への期待を多くいただいています。50万円なのに、50万円だけに、一切手を抜かずフルスロットルです。
とはいえ極貧は良くない
次回・他エリアではマネしない
選考中も進め方についてはいくつか注文を付けてきました。次年度のUIKや、他エリアで同様のことを実施する場合は、下記には留意してほしいです。
- スタートアップ支援というより自治体の課題解決が主目的なら、必要な資金を提供する
- 今回応募できたのは、初物ボーナス狙いと、タイミングがぴったりだったから
- このままでは「安物買いの銭失い」「安いものには裏がある」「やりがい搾取」になる
- 過度なファシリテーション、イベント化は不要
- 単にマッチング、実証ならイベント化は不要
- 採択前に気軽に現地に呼ぶ、プレゼン時間が異常に短い(ピッチ3分)、読めばわかるような全体説明など
- リモートワークを前提に、担当課に必要な設備を揃える
- 予算取り(10月末)~次年度(4月)に空白の5ヶ月を発生させないような予算措置
資金を得る
神戸市、バスロケに限らず、バス業界、バス情報システムは悲惨な状況で、解決すべき課題がたくさんあります。
「貧乏・面倒・根性」は路線バスの良くないところで、好き者しか集まらない理由だと思います。継続し人を巻き込むために打破していこうと思います。
いくつかの組織に目論見を伝え、資金や業務の相談を始めています。
神戸でも、有償で請けるべき課題解決が出てくれば提案していきます。
ご関心を持ってくださる方は、太田宛にご連絡ください。