本日、試験を受けてきました。自己採点では合格基準の60%を全科目クリアしていそうで一安心です。
背景
バスやタクシーを走らせて集客してみたいと思いまして、それには旅行業登録、管理者資格が必要ということで、申し込んでいたのでした。
スケジュール
2017/07/03 何気なく調べたら締切当日! 慌てて郵便局に投函。
2017/08/28 とりあえず薄いテキストを買ってみる。
2017/09/02 15:30 勉強開始
2017/09/02 19:40 テキストがイケてないのと過去問不足を感じ、三省堂でU-CANのテキストと過去問を購入。
2017/09/03 00:40 飽きてきてFacebookで愚痴る。ベッドでダラダラし始める。
2017/09/03 04:00 就寝。
2017/09/03 09:30 起床。過去問を始める。
2017/09/03 12:00 出発。電車の中でも会場でも必死に過去問。
2017/09/03 13:30 試験開始。半分くらいが学生っぽい。30分くらい余ったが見直しに使う。
2017/09/03 17:30 U-CANの解答速報で自己採点。合格してそう!
典型的な一夜漬けでした……
試験内容と勉強
試験は3つの章に分かれています。
1. 旅行業法及びこれに基づく命令(96/100点)
資格登録、告示方法、禁止行為、組織などのルールについての章です。
2時間勉強、1時間半過去問を解いて、ひたすら暗記しました。
2. 旅行業約款、運送約款および宿泊約款(96/100点)
業者と旅行者の契約のベースになる取り決めの標準形についての章です。パック旅行や乗車船券などを予約するときにチラッと目に触れる、変更、払い戻し、賠償などについて記載されています。
運送系の団体割引、小児料金、手荷物まわりを覚えるのがしんどかったです。小児扱いが、鉄道では6-12歳の小学生ですが、航空機では3-11歳で12歳の小学生はNGとは知りませんでした。
2時間半勉強、1時間半過去問を解いて、ひたすら暗記です。
3. 国内旅行実務(74/100点)
前半:観光資源(38/52点)
名所の特徴、名所同士の位置関係、名物の食べ物やイベントについての出題です。
今さら勉強しても仕方ないと、中学受験地理、中高時代の鉄道旅行、観光ビッグデータ分析の経験を信じて無勉強で臨みました。実際、インバウンド分析でおなじみの伏見稲荷、徳島のアソシエーション分析で散々出てきた祖谷のかずら橋と大塚国際美術館、岡山県の数少ない観光地蒜山高原などデータで分析した知識が活きました!
後半:宿泊、運送の運賃・料金(36/48点)
嫌がらせのように複雑なJRの運賃・料金計算ルールや、JALやANAのチケットごとの取り消し手数料といった、お金周りの出題です。
ウトウトしながら4時間ほど勉強。過去問は時間切れでノータッチ…
合格するには
- センター試験の公民系で高得点を取れるマークシート試験センス
- それなりの交通、観光知識
がある人なら、あとは一夜漬けでルールを一瞬頭に入れれば合格できるようです。理系ですが、情報処理試験より簡単でした。
参考書は、2冊で5400円と少々高かったですがU-CANの方がよかったです。テキストでは要点が強調されていて、過去問では全選択肢に解説があってはかどりました。
これで良いのかこの試験
旅行業を営む人が最低限身につけるべき知識を規定しているのだと思いますが、なんとも古めかしい試験に感じました。
マジックナンバーと固有名詞
「問題が起きた時は〇日後までに△△円払う」だとか、そういうのは起きた時に調べれば良いように思います。
低頻度な事象の詳細
旅行業の登録や営業所開設などは、そう頻繁にあることではないので、やはり調べながら実施すればよいと思います。旅行業法の条文を持ち込み可にしても良いのではないでしょうか。
JR/JAL/ANAの社内ルール
- JAL「特便割引21」とANAの「旅割21」の取り消し手数料の違い
- 「あさま」のグリーン車から「かがやき」のグランクラスで本庄早稲田から金沢に行った時の料金
- 天王寺(大阪市内なので大阪起点)から在来線と山陽新幹線(一部岩徳線経由の換算キロ)で湯布院(小倉からJR九州なので運賃加算、久大本線は擬制キロ)に行った場合の運賃
こんなことは、各社のシステムで計算・表示してくれる結果を見ればよいように思いますが、なぜこんなにJR/JAL/ANAの社内ルールが重要視されるのでしょうか?
本資格は、1971年の旅行業法制定が起源です。その頃、新幹線が大阪から西に延びようとし、ジェット機が普及し始め、オリンピックや万博を契機に旅行ブームが起きていたようです。公共交通の高速化が観光の起爆剤になっていました。
当時、JRの前身である国鉄では、運賃の変更に国会審議が必要でした。航空ではJAL(国際線)・ANA(国内幹線)・東亜(国内ローカル線)の棲み分けが45/47体制として規定されたばかりでした。運賃も路線も国が決めていたガチガチな時代です。そんな時代に作られた資格試験であれば、法令に準ずる位置づけで国鉄や航空会社のルールを出題していたのも理解できます。
それが今や、JRは分割民営化され、新幹線は各方面に延び多様な種別が走り、県ごとに三セクの並行在来線が混じり、グランクラスも登場しています。航空業界はJAL/ANA以外のLCC等が増え、価格競争も激しくなり多種多様な料金種別が設定されています。
複雑化した運賃料金は、乗換検索、きっぷ予約、パックツアーサイトなどで自動で計算され、人力で計算する必要性はほぼなくなりました。また注意事項も必要なタイミングで勝手に出るので、人が説明しなくてもよくなりました。
国の統制から離れ、多様化し、機械が勝手に計算してくれる運賃料金について、丁寧に学ぶべき時代は20世紀までと言えるでしょう。
全国の観光マメ知識
全国の名所、名物の広く浅い知識は、旅行業を営むのに必須なのでしょうか。
観光プランの現場以外では不要ですし、着地型旅行の提供を期待される「地域限定旅行業」でも必要性が低いでしょう。
一方、検索すればいくらでも情報を調べられる今、観光プランナーに期待される知識・スキルは高まっていると思います。しかし、バスガイドさんが発する定型文のようなセンスの出題で、それは判定できません。
世界遺産、国定公園、ラムサール条約、三大〇〇のような権威じみた観光知識も、口コミを辿って個人旅行をネットで手配する今、ちょっと時代遅れに感じます。
なんとも中途半端な出題です。
どうしたらいいの?
総じて、1971年時における基礎的知識を問う所から始まった試験が、時代が変わっても方向性が変わらず、増えたルールを取り込んだ分やたらと複雑になった印象です。
もっとシンプルに
旅行業を営むのに最低限必要な知識を問うのであれば、もっとシンプルでよいでしょう。
- 法令遵守中心
- 低頻度な業務のマジックナンバーや固有名詞は問わない。あるいは参考文献を資料としてつける。
- 運賃計算などシステムが行う仕事は細かく聞かない
- 観光マメ知識はカット
調べてみたところ、観光庁で地域限定旅行業者向けに試験内容をシンプルにする動きがあるようです。
その分高頻度に
一夜漬けで十分だったにもかかわらず、受けようと思ってから試験日まで半年ほどありました。年に1回では、ビジネスのペースに合いません。最低でも四半期ごとに、できれば就活のSPIのように機械でいつでも受けられるようにしてほしいところです。
社会問題やトレンドを盛り込む
一方、下記のような近年の社会問題やトレンドについては、業界の健全な発展のために知っておくべきことだと思います。センター試験の公民分野に近いイメージかもしれません。
- てるみくらぶ倒産、ツアーバス事故、ランドオペレーターなどの社会問題
- 白タク、民泊、相乗りなどの新業態、グレー領域
- 訪日外国人、地域DMOなどの業界トレンド
- 検索サイト、ダイナミックパッケージ、チケットレスなどのITトレンド
- LCC、高級寝台列車、高級高速バス、バスタ新宿など交通トレンド
専門スキルや健全性はまた別途
通訳、現地案内、計画などの個別のスキルについて、もし国で認定すべきことがあれば情報処理試験のように別途設定すればよいでしょう。
また、法令順守や事業健全性については、個人に試験で知識を問うて守れるものでもないので、監査の方が大事でしょう。
ルール自体をシンプルにしてほしい
試験の範疇を超えますが、覚えるのが大変なほどルールが複雑なのであれば、ルール自体をシンプルにする余地があります。
例えば…
Before) 8人以上の団体割引は運賃10%引、31-50人は運賃・料金含めて1人分無料で以降50人増えるごとに1人分無料
↓
After) 8人以上は運賃・料金含めて10%引
複雑なルールを覚えることを仕事の存在意義や参入障壁にするのではなく、シンプルにして誰にでも運用でき、自動化しやすいようにしていきましょう。
おわりに
ちょっと1日、勉強して入門試験を受けただけでも、旧態依然とした旅行業界・運輸業界の闇が垣間見えてしまったので、つい書き留めてしまいました。
詳しい方、事情など教えていただけると嬉しいです。